テンペラ実習07-インプリマトゥーラ・ハッチング

2018年1月3日

2006/11/28
1・「インプリマトゥーラ(地透層)」
前回、墨汁で素描をほどこしたボード全体に、水分を多めにして薄く溶いたテンペラ絵具のグリーンをかけます。この作業はインプリマトゥーラ(地透層)と呼ばれ、全体の色調をまとめ、この次に行うハッチング(白色浮出)の効果を高めます。どんな色を使うのかはケースバイケースですが、人の肌を描く場合などグリーンを使うのが定番だったようです。ルネッサンス時代ならテールベルト(天然緑土)の顔料が用いられたのでしょうが、現在では入手困難なためここではオキサイドグリーンを使いました。
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2・「ハッチング(白色浮出)」
ここからは、細く白い線を重ねてモデリング(立体感の表現)を行っていきます。この作業をハッチング(白色浮出)と呼びます。
<左>まず、絵具づくりです。チタニウムホワイトの顔料を絵皿にとり、テンペラメデュームと混ぜ合わせます。
<右>水を加えて濃度を調節します。試し描きの紙にどのくらいの濃さになっているか実際に線を引いて確認します。
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<左>ハッチングを行います。まずは形態の方向性に沿った線を入れてみます。
<右>人物のフォルムを出すために、単純化したタッチを入れてみました。鉛筆デッサンなんかのときに使う手法なんですが、どうもこいつがくせ者だったようです。
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この日の作業を終えて。とりあえず人物のフォルム全体にハッチングを行いました。次の工程でもう一度画面全体に薄く色をかけるグレーズ(透層)という作業をするので、この段階ではかなり白い印象になっています。図版と比べてみると、最初に入れた単純化したタッチの影響で木彫りの人形のような質感になっています。もう少し良く考えてから進めるべきだったかと反省です。ボッティチェリの柔らかな人肌と表情に迫るには、かなり苦労しそうです。
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※ハッチングを行う理由
テンペラ絵具は乾燥が速いため、油絵具のように隣り合っている色を、画面上で混ぜ合わせながらグラデーション(諧調)をつくること(スフマートという技法です)が出来ません。そこで、ここで紹介したように、細かな線を重ねるという手法をとります。ここでは白色だけを使って中間調から明るい方向に描いていきましたが、当然暗い方向、あるいは青から赤のように色相間のグラデーションも可能です。
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制作記録

Posted by hideta