<ドイツ写真の現在>・アイデンティティ

2018年1月3日

東京国立近代美術館で開催中の<ドイツ写真の現在>を観た。アトリエで
作品集を購入したロレッタ・ルックスの作品がお目当てだったが、同時開
催の<アウグスト・ザンダー展>とのカップリングの妙もあり、展覧会全
体としてもなかなか見応えのあるものだった。
コンピューターの発達でレタッチ(補正・修正)が簡単になったデジタル
時代のいま、ファインダーを通して切り取った世界をいかに再構築してい
くか?あるいはそのまま観客に投げかけるか?「写真」は「真実を写し取
る」という類いの、今までのイメージとは全く違うメディアになっている。
紹介されている作家は、前後10年位の幅を持って僕と同世代。ベルリン
の壁崩壊とその後をリアルタイムで生きてきた作家たちだ。表現手法はそ
れぞれに違うが、どこかナチス、東西ドイツの分裂、そして統合といった
歴史的エポックが強い影響を及ぼしているように思えた。
作家としてのアイデンティティは、個人に依存するものもあるが同時代性
と地域性によって規定される面も無視出来ない。それはその作家が「なぜ
表現するのか?」という根幹にもつながるだろう。「自分のアイデンティ
ティって何だろう?」と考えさせられた展覧会だった。