自分でハードルを設定する時代
2007/01/20
2007年は大学全入時代の幕開けといわれています。美術やデザインの世界は「手に職」という面があるので、浪人して難関校を目指す学生はまだ少なからずいます。とはいえ、新しくデザイン・サブカルチャー系の学科を立ち上げる大学が相次いでいることもあり、贅沢(?)をいわなければ簡単に進学できるようになってきていることも事実です。
現役で進学できるのであれば、それにこしたことはないかもしれません。しかし、15年以上にわたり受験生を送り出してきた経験に照らしてみると、十分な準備をせずに進学しても、なかなか4年間ではモノにはなりません。本人の資質にもよるのでしょうが、何も知らない素人がたったの4年で稼げるようになるほど、甘くはない世界なのです。
昔はその人が美術やデザインの高等教育を受ける準備が整っているかどうかを試すハードルは、入試の高倍率という外的な要因でした。美大も少なくほかに選択肢がなかったので「2浪、3浪当たり前」で予備校に通い、実技の習得に励みました。ある意味、こうして培われた実技力が、今の日本の美術、デザイン界を下から支えているのです。
現在のように、地方の大学も含め選択肢がたくさんあるということは、一面良いことのように見えます。しかし、「絵描きとしてやっていけるのか?」「デザイナーとして食っていけるのか?」「教師になれるのか?」と、その先を考えたとき、今はいれる大学に進学することが、よいことなのかどうか分からなくなってしまいます。
いわば、節目節目で越えるべきハードルが見えにくい時代です。これからの人生をよりよく生きようとするならば、自分自身でハードルを設定してそれを越えていかなければなりません。それはいわばその人の「生きる力」そのものです。僕たちは、実技指導を通じて、そういったことに気がつくきっかけになるような存在でありたいと思います。
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