無言館

2018年1月3日

2006/01/03
「無言館」への旅・戦没画学生巡礼記>を読んだ。これは、長野県にあ
る戦没画学生の作品を集めた美術館「無言館」の館長である窪島誠一郎氏
が、画家の野見山暁治氏と二人三脚ではじめた館建設の過程を、作品を譲
り受ける遺族との関わりを軸に語ったノンフィクションだ。
「無言館」に集められた作品群は、ある意味稚拙な画学生の習作に過ぎな
いかもしれない。しかし、それらは志半ばにして戦場に送り込まれ、二度
と筆を持つことのなかった若者の、生きていた証だ。掲載されている図版
から作者の無念さがにじみ出てくるようで、目頭が熱くなった。
そして50年もの間、大切に作品を守り続けてきた遺族から引き取る窪島
氏の思いは?まるで傷口のかさぶたを剥がすようなつらい作業をやり遂げ
られたのは、戦中戦後、生父母を知らされずに育ち、ついには自力で再会
を果たした氏の、今は亡き養父母への複雑な思いがあったからだろう。
人生は儚い。戦時でなくても、いつ自分の命がつきるのか分からない。そ
ういった緊張感を持って、日々暮らし、制作に取り組んでいるだろうか?
本書を読みながら自問した。今を懸命に生きること。そんな単純なことの
大切さに改めて気がついた。学生にも読んでほしい一冊だ。

日記

Posted by hideta