真っ黒デッサン
9月から開講した、中学生3年生対象の「美術高校受験クラス」の3週目。この日は「真っ黒デッサン」(僕のつくった造語です)を行いました。普通デッサンは、「白い」紙に鉛筆や木炭など「黒い」素材で描いていきますが、「真っ黒デッサン」では、まず画用紙全体を鉛筆で真っ黒に塗り込むところからはじめます。
最初に「1時間で画面を真っ黒にするように」と指示を出すと、「1時間も!?」と疑問の声が上がりました。ところが実際にやってみるとこれが大変です。すぐに鉛筆の芯が短くなってしまうので、頻繁に削らなくてはならず、なかなか黒くなりません。みんな手や顔まで真っ黒にしながら、試行錯誤しながら奮闘していました。
次に時間内にどうにか塗り終わったメンバーで倉庫に行って、なるべく「黒い」モチーフを探します。今回のモチーフは長靴と練炭、木炭に黒い布になりました。これらを、教室の中央にセットしてデッサン開始です。
鉛筆で線を引いても全く見えないので、練り消しゴムを使って描いていきます。今までやったことの無い経験に、はじめは戸惑ってどうしていいやらお手上げと行った感じでした。それでも、とりあえず自分なりに工夫して、鉛筆をつけたりとったりしているうちに、だんだんにカタチが浮かび上がってくると、面白さを感じてきたのか、おしゃべりもせず、すごい集中力で時間まで描き続けていました。
授業の最後に出来上がった作品を並べてみると、いつにも増して画面に迫力がありました。描いた本人達も、そのことは感じていたのか、講評を受ける時の表情にも充実感が感じられました。最初にちょっとしたハードルを設けたことで、「画面全体をとらえ、形を直し、完成させる」という描いていく上で必要な「意思の力」の大切さが伝わったかな?とちょっと手応えを感じました。
この授業では「鉛筆の持ち方や筆圧を調整できるように」と「練り消しゴムを<消す道具>ではなく、<明るく描き起こす道具>として使えるようになる」という2つの技術的な目的もありました。多分そのことは彼女達なりに感じ、吸収してくれたと思います。
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