対価
2007/09/29
古生物学美術を専門とされる corvo さんのブログに「お見積り」という記事がありました。その中に「美術の専門家を育てるのが美術大学の役目のはずだが、それを生業として経済的に自立していく為に必要な著作権の取り扱いや、契約書の書き方など、マネージメントに関しての指標を教えているところは皆無ではないか?」と言う趣旨の指摘がありました。
20年近く前の美大生である僕自身の経験に照らし合わせてみても、特にファインアート系の専攻では「いかに稼ぐか」という実学的な面より「いかによい作品をつくるか」という「美術至上主義」的な雰囲気が支配的でした。カンディンスキーの語るところの「芸術のための芸術」と言うことでしょうか?(おかげで!?僕の卒論の趣旨は「人は何故食えないのに絵を描くのか?」というものでした)
美術品の価格については、「開運!なんでも鑑定団」などのテレビ番組を観ると分かるように、本当に天文学的なものから、ゴミ同然のものまで千差万別です。消費者の立場に立ってみれば、よいものを少しでも安く手に入れたいと思うのが世の常ですから、この「値段があってないようなもの」に対して、作者自身がこの作品の価値はこういう理由でいくらだと宣言しなければ、買いたたかれるのが落ちでしょう。
ついつい「お友達価格」で採算割れとか、原価計算が出来なくて事業に行き詰まるようでは、せっかく高い授業料を払って大学を出てもどうしようもありません。最近では各美術大学にプロデュース分野の専攻も出て来ているので、その卒業生達に期待という面もあるかもしれません。しかし、 corvo さんがそうであったように、独立して自分の道を切り開いていく人間は、しばらくは現場での試行錯誤でそういったことを身につけていくしかないかもしれません。
ディスカッション
コメント一覧
こんばんは。
コメントとトラックバックありがとうございました。
やはり、生活の安定なくして、良い作品は生まれてこないと思います。ある年齢までは、命を削るように作ることは出来るかもしれませんが、それは健全なことではないと思います。
実務的なことというのは、身につける事も教える事も、とても簡単なことだと思います。
一週間も集中講義すれば、かなり身に付くのではと思います。
東京芸大あたりが、率先して取り組むべきことだと思うのですけどね。
corvoさん
コメントありがとうございます。
僕が学群(一般には学部と言います)時代に学んだ大学では、ファイン系の学生のほぼ9割が教職に就くという環境だったので、教職課程そのものが職業訓練課程だったのかもしれません。
そうした環境から種々の事情で大学院で東京芸大に行って思ったことは、教授陣を含め、そこにいる人たちが非常に人間臭いということでした。欲望に真っ直ぐと言うか、先生・学生臭くないと言うか・・・・。そんなことを思いだしながら、corvoさんのおっしゃるとおり、個人事業主としての実務的なことの講義は、やっぱり東京芸大ではぜひ行うべきだと思いました。