テンペラ実習03-地塗り

2018年1月3日

先週から始まったテンペラ実習。2週目は白色塗料による地塗りを行いました。
先週、布貼り使用した接着剤には重質炭酸カルシウムが入っていました。膠液と混ぜ合わせた状態だとけっこう白く感じるのですが、乾燥すると布の生成りの色が出てきます。これは、隠蔽力と言う力が弱いため起こる現象で、きれいな発色を得るためには下地を白くする必要があります。今日は、下地として白色塗料を塗り重ねながら、下絵のトレースを行いました。
この日使用した材料・器具
基底材-F4号(333×242mm)・先週、布貼り済み
膠水(ウサギ膠70gに水1リットルの割合・前日に作り置き)
重質炭酸カルシウム
チタニウムホワイト(アナターゼ)
電熱器・紙コップ・ナベ・ぞうきん・刷毛・画鋲
1・「白色塗料の準備」
チタニウムホワイト:重質炭酸カルシウム:膠水:水=1:1:1:1~3(体積)の割合で材料を片手鍋に入れ木べらで軽く撹拌します。<左>
ある程度大きなダマがなくなったら、刷毛を使ってより細かく混ぜます。<右>
チタニウムホワイトには、油と相性の良い「ルチル」と水と相性の良い「アナターゼ」がありますが、ここでは「アナターゼ」を使用します。水の分量は、塗り重ねるたびに少しずつ多くしていくのが無難です。
06110901.jpg 06110902.jpg
2・「基底材の準備」
表になる面に画鋲を刺して、机に直接触れないようにします。
06110903.jpg
3・「地塗り・1」
(1) 1で作った白色塗料をまず側面から塗っていきます。このとき、なるべく他の面に垂れないように慎重に作業します。<左>
(2) 側面が塗り終わったら、裏面に塗っていきます。<右>
06110904.jpg 06110905.jpg
4・「トレース」
白色塗料を乾かしている間に、下絵をトレーシングペーパーに写します。転写は線描きで行い、調子をつける必要はありませんが、なるべく細かくやっておいた方があとの作業が楽です。また、使用する鉛筆はHBやHなど、比較的固めのものがトレーシングペーパーが汚れにくく便利です。
06110906.jpg
5・「地塗り・2」
(1) 白色塗料が指で触ってもつかない程度に乾燥したところで、画鋲を裏面に刺し換えて表面に塗料を塗ります。この日は、塗料の温度が下がって多少ゲル状になっていたので、もう一度湯煎してさらさらの状態に戻しました。<左>
(2) 表面を塗っているところ。今度は、表面の水気が引いたらどんどん塗り重ねていきます。経験的には、一度に厚塗りするよりも、薄い層を何度も重ねていった方が亀裂や剥落と言ったトラブルは少ないようです。この日は、多い人で6回、少ない人でも4回程度は重ね塗りが出来ました。<右>
06110907.jpg 06110908.jpg
※ 膠を用いた水性下地のレシピは文献によって違います。チタニウムホワイトの代わりにジンクホワイトを使ったり、加える水の分量が違ったりと様々です。工夫しながら独自の下地を開発することも可能でしょう。
ただし、必ず守らなければいけない原則があります。それは、各プロセスごとの粉末と膠(膠水)の割合です。今回紹介しているレシピの場合、前膠塗りでは「膠水100%」、布貼りでは「膠水:粉末=50%:50%」、地塗りでは「膠水:粉末=33%:67%」と、上の層になるに従って膠分が薄くなってきています。
これは、膠の「引っ張り」による亀裂を防止するための処置です。膠水は乾燥するときに水分の蒸発に伴って体積を減らします。そのときに周りのものを接着しながら、乾燥の中心へ引っ張る力が働きます。この作用は、膠分が濃いほど強くなります。
また、一度乾燥した膠分も水分が加えられれば、多少ゆるくなります。このため、下に塗られた層よりも上に塗られた層の方が膠分が多い場合、上の層の引っ張りによって下の層の塗料にひびが入るのです。これは、日本画の岩絵具の塗り重ねの原則にも当てはまります。
最初は濃くて、だんだん薄く。これが下地作りの基本になります。
にほんブログ村 美術ブログへ にほんブログ村 教育ブログへ ブログランキング・にほんブログ村へ

制作記録

Posted by hideta