そして船は行く

2018年1月3日

ここのところ映画づいている。といっても劇場に通う訳ではなく、DVD
やレンタルビデオに頼るのだが…。さて、フェリーニの「そして船は行く」
(1983)を妻と一緒に観た。「ムーラン・ルージュ」を見た後ではイ
タリアの巨匠の作は、かえってとても親しみやすいものに感じた。
世界的なオペラ歌手の葬儀を行うために貸し切られた客船が、セルビア人
難民を洋上で拾い上げてしまい、それに関わる難問が降り掛かかる。あら
すじはこちら。ロートレックに英語をしゃべらせるハリウッドの作品とは
違い、異民族は「言葉の通じない存在」として字幕も出ない。
物語の終盤、映画のセットを裏側から撮って種明かしをするシーンがある。
たしか「8 1/2」でも同じような手法をとっていたのではないだろう
か?映画の虚構性を現実の撮影現場を見せることによって強調するのであ
ろう。こうした芝居がかった演出は割と好きだ。
観終わって妻と「予定調和的でないところがいいね」と感想を話し合った。
難民の輪に乗客が入ってみんなで踊るところ。機関室でオペラ歌手が張り
合って歌うところ。(動物の)サイとボートに乗るところなどが妻は気に
入ったようだ。人間愛にあふれ、どことなく可笑し味のある秀作だ。
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