「直す」「伸ばす」
義弟の結婚式の後、帰りのシャトルバスを待つ間に両親と少し話をした。
不惑を目前にしているとは言え、両親から見ればいつまでも「子ども」。
やれ「恰幅がわるうてみすぼらしい」だの「体を鍛えにゃいかん」など、
注文がつく。一々反論しても仕方ないので、笑って聞いている。
バスに乗る寸前に母親が言い出しにくそうにきりだした。「あんたらの指
導は子どもを全否定するじゃろう?ありゃいかん。良いとこ見つけて褒め
てやらにゃ、くさってしまうで。」と。昨年両親をアトリエに招待して授
業の様子を見てもらったときから、ずっと心に引っかかっていたらしい。
10年前なら「美術予備校というのはそういうものだ」と相手にしなかっ
たかもしれない。しかし今回は考えさせられた。予備校での指導の多くは、
欠点を直すことに向けられる。しかし、学生は下手だから通ってきている
のだから、そのことを改めて指摘したところで何の意味があるのだろうか?
ダメだしするのは簡単だ。それに対し、一人ひとりのよいところを見つけ
る作業には、とても体力が必要だ。教える側の知識や能力も問われる。だ
からこそ、あえて「歪んでいるものを直す」教育ではなくて「まっすぐに
伸ばす」教育を目指す。そんなことに思い及んだ。やはり親はありがたい。
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