20、21日の搬入日も、撮影終了後にはアトリエに帰ってファイルの変
換など簡単な作業を行っていた。一通りの撮影が思いのほか早く終わった
ので、この日から本格的な編集作業に入る。まずは、確定した出品数から
ページ繰りを割り出す。これは僕の仕事だ。
日本画、洋画、彫刻の3つのジャンル。そして会員、招待、一般の3つの
出品形態を組み合わせて考えなければならない。会員と招待は、名簿順に
という縛りもある。そんな中、どうにか当初の予定通り、1ページにつき
会員は2点。招待は4点。一般の出品者は6点掲載でいくことを決定する。
実際に画像ファイルを配置してみると、彫刻の解像度が不足していること
に気がつく。作品に対して照合用の札が大きすぎたことが原因だ。しかし、
それ以外はあれだけのスピードで撮影したにもかかわらず、まず問題ない。
さすがはプロとうなる。レタッチはほとんどしなくてすみそうだ。
しかし、巻頭に掲載予定の市長と教育長からのメッセージが届かない。ど
うやら、顔写真を添付して市役所からメールで送ると、セキュリティーに
引っかかるらしい。とりあえず、火曜日に彫刻の再撮影と、作品と受付番
号の再照合を行うので、そのときに手渡してもらうことにする。
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松戸市美術展搬入2
松戸市美術展の搬入2日目。洋画部門の搬入日だ。午前中は業者による委
託搬入。午後は個人搬入になっていた。しかし、担当課の指導により出品
要項に「業者搬入」と書けず「一般」となっていたので、個人搬入で朝一
番に持ってくる人もいて多少混乱した。
昨日1日で彫刻20点、日本画90点が搬入された。洋画部門は340~
350点ほどの出品が見込まれる。労働量は昨日の比ではない。そのため、
アトリエの昼間部生から3人。OBから1人のアルバイトを頼んだ。搬入
された作品を撮影場所に運び、撮影後保管する純粋な肉体労働だ。
僕自身は受付にいて出品申込書をチェック、データベースに入力していく。
撮影現場では、作品と一緒に受付番号も撮影する。ある程度まとまったら
画像データをBlack先生のPowerBookに読み取り、その場で
ファイル名を受付番号に変え、jpgからpsdに変換していく。
この日も学生たちの活躍で順調に撮影は進み、なんと345点の出品作す
べてを撮影できた。最後の作品を撮り終えたときには、拍手が起こった。
カメラマンとは、1日200点程度が限界と話していたので、恐るべきス
ピードだ。学生たちもかなり疲れたようだが、いい経験になっただろう。
松戸市美術展搬入1
松戸市美術展の搬入日。今年は40回の記念展になるので、出品者全員の
作品を掲載する図録を作成する。そのため例年とは少しスケジュールが変
わり、2週間ほど早い搬入だ。1日目の午前中は彫刻、午後は日本画の受
付になる。それと同時進行で撮影を行い、すんだ作品は別室に保管する。
図録製作のスタッフは、僕とBlack先生とパンフレットをお願いして
いたN君。この為に急遽立ち上げた「アトリエ新松戸デザイン室」のメン
バーだ。撮影は「スタジオ前田」のMさん。何でも、僕の筑波時代の恩師
である美術会の会長が、高校で教鞭をとられている頃の教え子だそうだ。
前回作ったのが10年前。DTPの発達で、撮影や編集の方法もずいぶん
変わっているので、ほとんどゼロからスケジュールを組んだ。撮影された
作品と名前や題を照合するため、受付方法がいつもと違うので現場は混乱
する。番号と作品がずれて、あわてて受付を止めることもしばしばだった。
そんな中、アルバイトとして来てもらったアトリエOBのY君の大活躍で、
撮影は思いのほか順調に進み、この日搬入された作品はすべて撮り終えた。
やはり20代はよく動く。今回は6月11日発売開始と納期の決まってい
る仕事だ。まずはスムーズな仕事の滑り出しに胸を撫で下ろした。
忙しい?
今日の業務(?)とその周辺。夏期講習会パンフレットの本紙色校正。ス
タッフへの給料支払い。受験部の土日コースとカルチャー教室の準備。管
理会社による防災関連設備の検査。会計事務所と決算書類作成のための打
ち合わせ。新象展出品作品の搬入業者への引き渡し・・・
松戸市美術展出品作品の額装。第40回記念図録発行にともなう印刷業者
との打ち合わせ。7月の「人あつまり展」開催に伴う必要経費の新事務局
への供出。明日に予定されている松戸市美術展の搬入手伝いアルバイトへ
の連絡。作品撮影のカメラマンとの打ち合わせなどなど。・・・
とにかく忙しい。めまぐるしい。しかし、あれもこれも、自分のやりたい
ことをやっているのだから、不満はない。ありがたいことだ。ものを作る
ときは、ある種「躁」状態になっている。この忙しさは、それがそのまま
日常に流れ込んだ感覚だ。いわば「ハレ」の状態が続いている。
表現と教育を生業としていると、何が仕事で何がプライベートなのかよく
分からなくなってくる。結局、自分が何かやることが社会貢献であり、業
務であると割り切るしかないのだろう。そう考えると、なんと幸せな人生
なのだろうかと思う。それを支えてくれる家族にも感謝だ。
虹&事務局引き継ぎ
一日ハッキリしない空模様だった。雨がぱらついたと思ったら、夕方急に
外が明るくなって、事務所から見えるビルの壁が夕焼け色に染まってきた。
雨が上がったかと思い非常階段に出てみると、そこには大きく、鮮やかな
虹が出ていた。これだけハッキリしたものを見るのは久しぶりだ。
「お役御免」で書いたように、この3月末で「人あつまり会」の事務局を
後任に引き継ぐことになっていた。しかし、後任も美術科教諭という仕事
を持っている。それに彼の所属する公募団体の展覧会が5月前半にあった
ため、自分の多忙も手伝って、これまで引き継ぎができなかった。
しかし、7月には「人あつまり展」もある。メンバーへの出品確認や搬入
出の手続き、当番の割り振り、案内状の制作など、もうそろそろ活動をは
じめなければならない。昼間に電話で連絡を取り合い、学校が終わってか
らアトリエにきてもらって引き継ぎを行うことにした。
年間行事や連絡網、お金の流れなどを説明し、資料や会のゴム判などをま
とめて手渡す。スポンサーである浅野工務店とのつきあい方などについて
意見を交わし、これについては次の会議で提案することにした。これでよ
うやく引き継ぎ完了。一つ肩の荷が下りたような気がする。

天気雨の中、こんなにハッキリした虹が見えました。
シンクロ
夕方、京都精華大学の教授が営業にみえた。なんでも、芸術学部のデザイ
ン学科とマンガ学科が学部に昇格するのだという。今は、大学も学生集め
のための営業活動は欠かせない。うちのような零細予備校にもちゃんと説
明にきてくれる。居ながらに情報が得られるのはありがたい。
マンガを学部単位で扱う大学は、ほかにはないのではないか。学部の中に
は、マンガ学科、マンガプロデュース学科、アニメーション学科の3つの
学科ができる。原作づくり、編集、評論など「描く」以外の分野でマンガ
文化を支える人材を作ろうとしているところに新しさを感じた。
その日の夜に、以前僕の担当だった学生が進路について相談にきた。今は
デザイン工芸科に所属しているが、本当はマンガがやりたいのだという。
自分の将来を高校3年生になったばかりの段階で、決めてしまうのは難し
い。学年の途中でコースが変わることも当然あり得ることだ。
マンガ関連の進学となるとなると、デザイン工芸科では対応できない。そ
こで、総合受験科へのコース変更をすすめた。それにしても不思議な縁だ。
さっそく、京都精華大学の例を出して、将来にはいろんな選択肢があるこ
とを説明する。この変更が学生にとって良いものであればと思う。
なんじゃこりゃ!?
久しぶりの休日。昼近くまで惰眠を貪る。家族への日頃の罪滅ぼしをかね
て、昼食にかき揚げをのせたかけそばを作った。我が家では麺類は僕の担
当。僕自身決してグルメではないのだが、関東味がどうしてもなじまず、
麺類を作るときには出汁からとった自家製のつゆを使っている。
最初のうちは全く情けないものしかできなかったが、最近は少しはましに
なったと思う。素材は高級なものではない。近所のスーパーにおいてある、
昆布と削り節、砂糖、醤油、酒、みりん。すべてお手軽価格のものばかり。
ただ、水道水は必ず一度ろ過してから使うようにしている。
分量なんかも結構適当に作っているので、味は安定しないし雑味は多い。
しかし、安物でも素材の味をいかし、素朴な味の中に栄養素を感じられる
ものを心掛けている。これになれてきたのか今では家族の味覚になってい
るようだ。こうなると、市販のものがなんとも奇妙な味に思えてくる。
この日も、そば湯に市販の「本つゆ」を入れてみた。すると、なんだか舌
に膜が張り付いたみたいで、気持ち悪い。化学調味料のせいなのか?とに
かく、口に含んだ瞬間に「なんじゃこりゃ?」という感覚だ。身を守るた
めに味覚を研ぎす。動物ならば当たり前のことが難しいのかもしれない。
第40回記念松戸市美術展図録製作委員会
5月11日の「寄稿依頼」で書いたように、松戸美術会では「第40回記
念松戸市美術展」の図録を製作、発売する。そんな中、僕はアトリエの入
学案内や展覧会のダイレクトメールなどを通じて、印刷業界と縁が深いと
いうことで、気が付いたら現場の長になっていた。
搬入を1週間後に控え、前回の理事会での討議も反映しながら、工程や人
員配置、実際の作業内容などを具体化させるため実行委員会を開いた。と
はいっても、場所をとるには時間が少なすぎたので市民会館のロビーでの
会合だ。近くの商店で暖かい缶飲料を買って、膝をつめて話し合った。
40年をこえる期間活動してきた団体だ。ボランティア精神は高いものが
ある。みんな自分のできることを積極的に受け持ってくれる。文化芸術に
関する事業は、それ単独で営利を追求することは難しい。行政の力なり、
民間のボランティアの存在が欠かせないことを改めて実感する。
製作予算は200万円。すべて松戸美術会の自腹だ。今回の出版部数は限
定500部。単価2000円以下なので、全部売り切っても大赤字だ。常
識的に考えたらこんなバカげた商売はない。でも、文化を作っていくのは
「ここに表現活動を根付かせたい」と願う、そんな人たちに違いない。
朝テスト
今年から、昼間部を対象にした朝テストを行っている。今までも実技の授
業が終わった後に学科授業を行っていたのだが、オプション扱いで希望者
のみの講座だった。しかし、模試の答案などに現れる基礎学力の低下は目
を覆うほど。何か手を打たなければということで実施に踏み切った。
継続してやることによって効果が期待されるという理由で、英熟語と漢字
の書き取りを課している。ごくごく簡単な問題集をそれぞれ1冊ずつ配付
し、決められたページを10分で回答、自己採点して提出する。週末には、
その週の出題範囲から任意に問題を書き出して、まとめのテストを行う。
基礎的な範囲から始めているので、今の時期ならテストの直前に10分で
も問題集に目を通せば満点が取れるはずだ。しかし、なかなか思ったよう
にはいかない。特に漢字の書き取りでは目を疑うような解答に出会う。知
識の有無というよりも、読んでもらう気があるかどうかというレベルだ。
今、小学校などでは書き順などあまり気を使わないのだろうか。とにかく
自分勝手な字のオンパレードだ。国語担当の講師やほかのスタッフと相談
して、トメ、ハネ、ハライまで正確に採点することにした。些細なことだ
が、こんなところから「他人に見られる自分」を意識してくれればと思う。
経験すること
同じ松戸市内に住む筑波大学時代の恩師宅にお邪魔して、パソコンとイン
ターネット関係の設定を手伝うことがあった。恩師は現在、大阪芸術大学
の美術学科で教鞭を執られている。同学では、昨年キャラクターデザイン
学科ができた影響で、美術学科の受験生が減ってきたという。
今、中学、高校では美術の授業時間数が減少していて、油絵に触れる機会
のある学生はごく限られている。アトリエ新松戸の取り組みとして、高校
1,2年生対象の基礎科では、志望コースに関わらず全員に油絵を体験さ
せている。そうしたところ、油画科志望者が増えた事象を紹介した。
油絵具はルネッサンスから続く伝統的な素材だ。それまでのテンペラやフ
レスコに比べ、その表現技法に制約が少ない。実際に油絵具に触れてみて
「自分のドロドロしているところが表現できる気がした」という理由で油
画科を選んだ学生もいる。これまでには無かったパターンだ。
今はデジタルの時代で、パソコンで何でもできてしまうような気になるか
もしれない。しかし、リアルな物質による表現は、素材の存在自体が直接
的であるがためによりストレートに観る人に届く。まずはリアルの世界で
経験すること。当たり前のことが、その人の可能性を広げるのだ。

学生たちは、アトリエの専門家用絵具、溶き油、筆やナイフを借りて体験します。