hideta のすべての投稿

美術系進学説明会2

現役美大生による質問会に続き、アトリエOBで、スタッフでもあったE
君とデザイン工芸科主任S先生の対談に移った。E君は、武蔵野美術大学
卒業で、現在、広告制作会社に勤務するデザイナーだ。入社2年目だが、
今では指名での仕事も来るという。ずいぶん頼もしくなった印象だ。
対談は、E君が自分の作品を紹介しながら進められた。学生時代の作品に、
僕との会話の中で「歩きタバコの火って、ちょうど子どもの顔あたりにく
るんで危なくて…」という一言からスタートしたというポスターがあった。
JTがCMを始めるはるかに前のことだ。そのアンテナ鋭さに感心した。
予備校時代から優秀な学生だった。2年浪人したのだが、あのくらい力を
つけてから大学に入ると余裕ができるのだろう。私学は課題が多く、それ
をこなすことで精一杯という学生が多いのだが、彼は学園祭の情報宣伝を
始め積極的に様々なイベントにたずさわり、多くの自主制作を行っていた。
「受け身ではなく、自ら行動して道を切り開く」「できない理由を考える
前に行動する」ものつくりとしての優秀さについて考えると、こんなに単
純なことに行き着いてしまう。小さなことの積み重ねが、いつか大きな差
になっていくのだろう。なにはともあれ「やらなきゃ解らない」だ。

美術系進学説明会1

受験部の学生やその保護者、近隣の高校生を対象にした「美術系進路説明
会」を開催した。会は僕の挨拶と基調講演から始まり、アトリエOBであ
る現役大学生による質問会。同じくOBのデザイナーとデザイン工芸科主
任の対談。各コースごとの分科会という盛りだくさんの内容で進行した。
基調講演では「ニートと呼ばれる無職の若年層の増加に現れているように、
企業の求める資質と、求職者のそれの間に乖離がある。美術やデザインに
たずさわる人間としては<学歴>をつけて安心するのではなく、<本質的
な造形力>をつけることが求められている」という話をした。
社会にとって必要な人材であれば、どこの会社に入ってもやっていけるは
ずだ。そんな人間を目指して、自分を磨くことに執心してほしい。大学受
験を生業とする予備校側が言うことではないかもしれないが、つい安易な
方法論に流されがちな自分たちへの戒めも込めた、正直な気持ちだ。
大学全入と団塊の世代の大量退職開始という、大きな波が2年後に迫って
いる。そんな中で、美術と教育に関わる環境がどうなるのか、全く予想が
つかない。だからこそ、夢を持って理想に向かって進んでいきたい。そん
な思いからつい話に力が入り、10分オーバーでバトンを渡した。続く
050626_01.jpg
70人を超える参加者の前、ちょっと緊張しながらの基調講演でした。

こんなモチーフ描いています

火曜日と木曜日の絵画教室のクラスでは、共通のモチーフをみんなで一斉
に描くスタイルの授業を行っている。静物が中心になるのだが、いわゆる
静物のモチーフばかりだと飽きてしまう。それに「描き方」ではなく「表
現」を学んでほしいので、モチーフセッティングは毎回大いに悩む。
絵を描く上で最も大切なのは「何を描くか」ということ、つまりモチーフ
選びだ。そして「どのような構図で描くか」。この2つが決まれば、絵の
8割は決まったも同然、だと日頃から生徒さん達には言っている。手先の
ことよりテーマ性や造形衝動の根源が大切なのだ。
しかし、教室ではどうしてもモチーフをこちらから与えることになる。そ
こで、モチーフを写して終わりではなく、描く人が自分なりのイメージや
モチーフを画面の中に加えていけるよう、あえてアンバランスな組み方に
したり、常識では考えられないものの組み合わせにしたりしている。
下の写真が今描いているモチーフだ。アトリエの窓を開けると、暖簾や吊
るされた貝殻がゆらりと動く。僕のやり方に最初は面食らっていた生徒さ
んも、今では、どんどんイメージを広げていって描いている。こういった
ことを繰り返しているうちに、みんな違う絵になっているのが面白い。
050621_01.jpg

陶芸実習

月曜日の午前中。油画科とデザイン工芸科合同で陶芸実習を行った。予備
校での課題は、デッサンや色彩など「絵を描くこと」が中心で、陶土や金
属など工芸で使用する材料を使うことがあまりない。このような授業を通
して、工芸分野にも興味を持ってもらい、表現の幅を広げることが目的だ。
指導はカルチャー教室工芸部のS女史。こういった授業ができるのも、カ
ルチャー教室と予備校と両方やっているアトリエの良さだ。夏期講習会前
のキャンプのときに、乾杯で使うコップを作るということになっているの
だが、逸脱するものもチラホラある。まずは楽しめれば良しとしよう。
この日作った作品は、キャンプの時、現地で野焼きする予定になっている。
この企画、実は今まで何回かチャレンジしたが、焼成時に破裂したりでな
かなかうまくいかなかった。そこで今回はあらかじめアトリエの電気釜で
素焼きをしたものを現地で焼くことにした。
最近の学生は、火を使うことに慣れていないので、薪の組み方や空気の送
り方などアドバイスしながら焼成する予定だ。野焼きならではの自然釉の
野趣が出るかは、1000度を超える高温状態が作れるかどうかがポイン
トになるらしい。やってみなければ解らない。僕も経験、彼らも経験だ。
050620_01.jpg

無料デッサン教室&市展搬出

アトリエ新松戸では「無料デッサン教室」。いつもは個人面談を担当して
いるのだが、この日は市展の搬出日と重なった。そのため受付と最初の挨
拶だけして後は、現場の指導はデザイン工芸科の男女両M先生。個人面談
は基礎科のO先生とデザイン工芸科のS先生に任せて会場に向かった。
夕方からの搬出を前に、松戸駅市民ギャラリーで行われる受賞者展の準備
をした。2時過ぎから受賞者自身が自分の作品を持って、文化ホールから
駅ギャラリーに移動し、運営委員とともに展示する。通りがかりの人も見
守る中、ガラス張りの陳列ケースの中で、汗だくになって展示した。
作業を終え、再び市展会場へ。4時を待って搬出開始。今年は図録制作も
あり特別な感慨が残る。個人的にはとても充実した展覧会だったが、深く
関わるにつれて、いろいろな負担が増えてきているのも事実だ。その負担
感も、ちゃんとみんなで仕事を分け合えれば、軽減できる気がする。
運営上の不備もいろいろと見えてきた。例えば、搬出に現れない人への対
応や搬入日の周知方法、搬出時の作品チェックなど改善すべき点は多々あ
る。10年前に比べて100点以上出品数が増加している。毎年同じ方法
では限界だ。さてこれからどう変えていくのか。みんなで考えていきたい。

コラグラフ

土曜日のクラスでコラグラフを行った。コラグラフとはコラージュの手法
によって作った版を刷る版画のことだ。ニードルや彫刻刀によって「彫る」
のではなく、様々な素材を貼付けて版面に凹凸をつけることによって、凸
版、凹版両方に使える版を作ることができる。
今回は、版画専用の特別な素材を使わなくてもできるように、寒冷紗の代
わりにフキンを、インクの代わりにニュートンの大作用絵の具をつかう。
絵の具を版につめるのもローラーなどを使わず、歯ブラシで代用した。用
紙も版画の専用紙ではなく、一般的な画用紙を使ってみた。
午前中の授業の合間に、プレスのサイズに合わせてほぼハガキ大の版にな
るイラストボードをカット。刷る用紙もそのふた廻りくらい大きいサイズ
にカットし、水分を含ませる。これだけの作業でも一人ではとてもできな
い。S女史にお手伝いしてもらいつつ、2点ほどサンプルの版を作った。
生徒さんは、何がなんだか分からないまま様々な素材を持ち込み、ボード
に貼付けていく。僕の作ったサンプルを実際に刷ってみると、驚きの声が
上がる。貼付ける素材によって凸版向き、凹版向きの版があることを確認
しながら刷っていった。作品のサンプルはこちら。↓
050618_01.jpg050618_02.jpg050618_03.jpg
僕の作ったサンプル。左から凸版、凹版、版
050618_04.jpg050618_05.jpg050618_06.jpg
生徒さんの作品。左から凸版、凹版、版

サイト更新

夏期講習会生の募集開始と、各科対抗バレーボール大会の開催を受けて、
アトリエ新松戸のHPの「トピックス」「ニュース」のページを更新し
た。ここのところ、記念図録やら他のことが忙しくて、なかなかWEBに
まで手が回らなかったので、ほぼ1ヶ月ぶりの更新になる。
バレーボール大会の写真は全部で300点以上あるということだったので、
実際に撮影したデザイン工芸科のS先生に選んでもらった。一部を除いて
スポーツとは縁遠い生活をしている集団ゆえ、なかなか絵になるポーズ、
瞬間がなくて困ったようだ。こうみるとプロの選手は絵になるものだ。
夏期講習会に関しては、このサイトを見ればカリキュラムや料金など必要
な情報が過不足なく手に入れられることを目指した。去年のデータをもと
に画像やカリキュラムを入れ替えていく。パンフレットの雰囲気を、いか
にして伝えるかということにも気を配った。
トップページのフラッシュは、19日の「無料デッサン教室」が終わり次
第「夏期講習会」バージョンに更新する予定。現在S先生が鋭意制作中だ。
これからまた「日本で一番活発な美術予備校のホームページ」を目指し、
カルチャー教室も含めてどんどん更新していきます。お楽しみに。
050617_02.jpg

展覧会廻り

美術館&画廊巡り。上野の都美術館で「中美展」「青枢展」。銀座ではO
ギャラリーで「古山浩一展」、アートポイントで「プロローグ」(うちの
スタッフのI先生出品)、メルサの「上野實 偲ぶ展」、K’sギャラリー
の「原大介ドローイング展」を足早に駆け回る。
中でも秀逸だったのが「上野實 偲ぶ展」だ。上野先生とは、松戸美術会
で何度も同席させていただいていたはずだが、世代が離れていることもあ
り、あまり交流はなかった。しかし、美術会の重鎮であるE先生から「上
野は天才だ」と言われていたことを今回目の当たりにすることができた。
例えば、野見山暁治先生が「みる」ことの大家であるとしたら、上野先生
は「描くこと」の大家と言えるだろう。自分の行為を痕跡として画面に残
すことに、徹底的にこだわった作家だ。この辺りのことは、理念とか理論
ではなくて多分に自分の直感から受け取った。
亡くなったのは3年前。期間は短かったが、僕はこんなすばらしい作家と、
地域の展覧会で、同じ会場に作品を展示していたのか!?本当に驚く。彼
らと天国で本気の芸術論争ができるくらいの勉強はしておかなければ・・
やるべきことはまだまだ多い。

スポーツ大会

14日は受験部のスポーツ大会。学生と指導スタッフ、OBも集まって、
小金原体育館でバレーボールのトーナメントを行い、それぞれ本気で優勝
を狙って試合に臨んだ。とはいえ、日頃から体を動かさないメンバーが大
半。体は鈍りきっている。珍プレーの続出で会場は笑いに包まれた。
大会はデザイン工芸科Aチームの優勝で、無事終了することができた。し
かしなぜ、受験予備校でこのような行事が必要なのか?単なる息抜きか?
学生と指導スタッフの親睦をはかることも大切だ。なによりも一人一人、
どこかで輝ける場所を作ってあげることに意味を見いだしている。
アトリエには、経験も特性も違う学生たちが集まっている。そんな中、単
一の指標のみで彼らを評価していけば、自ずと優劣が固定してしまう。し
かし実社会ではAでは良しとされたものが、BではNGになることは日常
茶飯事だ。評価の基準なんかTPOに即してどんどん変わっていく。
昼間部に課している朝テストなんかも同じで、それぞれの得意分野で結果
を残すことによって、それが自信につながる。自分自身の存在に自信がつ
いてくれば、それが他者を受容する原動力になる。スポーツ大会開催なん
て気軽な事象も哲学すると、こんなことになる。

からあげ用?観賞用?

火曜日に各科対抗バレーボール大会が入ったため、基礎科は月水金コース、
火木土コース合同で変則カリキュラム。1日だけのカラードローイングを
行った。「ぜひ生きているものを」ということで、担当のO先生が選んで
買ってきたのは沢ガニ。一杯30円なり。
何でもスーパーでは「からあげ用」として販売されていたらしい。たしか
に、魚や野菜をモチーフにするときは、刺身用だったり、生食用だったり
するのだが、生きて動き回っている「からあげ用」の沢ガニを「観賞用」
として描くというのは、何ともシュールな感じがした。
バケツの中で動き回っている沢ガニを、直接手で捕まえて自分のパックに
入れるのだが、それだけで大騒ぎしている女の子がいる。そんなことで料
理ができるのかしら?などと思うが、まあこういった授業のときのお約束
だ。授業の様子は「アトリエ新松戸/基礎科ブログ」にあります。
翌日、僕のクラスでも水彩の人に描いてもらった。こちらは大人のクラス。
さすがに騒ぐようなこともなく、水草とアレンジしてどんどん描き進む。
経験というのだろうか?昨日騒いでいた子たちも、もう何十年かするとこ
うなるのだろうか?などと、これもお約束の感慨に耽った。
050617_04.jpg
モデルを終えた後も、アトリエで飼っています。